AIを「デキる相棒」だと思って使う人ほど、なぜか成果が出てしまう話

同じChatGPTやClaudeを使っているはずなのに、
「もう手放せない」と言う私のような人や、
「結局たいして使えなかった」と言う人がいる。
ツールは同じ、モデルも同じ。なのに満足度も、出てくる成果物の質も差がつく。
これがずっと不思議だったんですよねぇ。

最近、その差の正体が少しずつ見えてきた気がします。
鍵を握っているのは、AIの性能そのものよりも、「使う人がAIをどう思い込んでいるか」のほうなのでは?
今日はそのあたりを、これまた私が大好きな心理学の現象とAIの実験研究をつなげながら、
ゆるっと掘り下げてみようと思います。

同じAIなのに、引き出せるものが正反対になる

まず身近な観察から。AIを使う人をざっくり2タイプに分けました。

①AIを「有能な相棒」だと思って使う人。私自身が無能なため、必然的に私はこちらの人になります。
※こちらの分類になる人が全員無能という意味ではありません。w
前提や背景をちゃんと渡す。返ってきた答えがズレていても、いきなり見限らない。「ここが何か変、もっとこう直して!」と会話を重ねる。提案はとりあえず一回以上試す。つまり、相手を信頼している前提で、対話と改善のやりとりをしているわけですね。もし信頼がなければ、一回のやりとりで「こいつアカンな。。。」と使うのをやめてます。

②AIを「どうせバカ」「危ない」「信用ならない」と思って使う人。指示は雑になりがち。一行だけ投げてフワッとした答えが返ってきて、「ほら、やっぱり使えないやん」で会話が終わる。
そもそも期待もしていないから手間をかけない。手間をかけないから正直、精度も上がらない。
そして「やっぱりダメだった」という最初の予想が、見事に的中する。

投げているのは同じAI。違うのは相手をどう見て、どれだけ手をかけたか。
「期待」が「使い方」を変え、その行動が「成果」を変えている感じですね。
信じて丁寧に向き合う人には良い面を返し、見下して雑に扱う人には残念な面を返す。
AIは、そういう意味でちょっと鏡っぽいかもしれません。

これ、心理学でいう「ピグマリオン効果」にそっくりだなぁ

今回の記事を考えていたら気づいたんですが、この構図まったく新しい話ではないなぁって。

「あっ、心理学のピグマリオン効果じゃなかったっけっかなぁ?」って事でピグマリオンを振り返り検索。

1968年、教育心理学者のローゼンタールとジェイコブソンが、ある小学校で教師たちに「この子たちは今後ぐんと伸びますよ」と告げて名簿を渡す。ただし、その名簿は実際にはランダムに選んだだけで、能力的な根拠はゼロ。それでも数か月後、「伸びる」と言われた児童たちは、本当にほかの子より成績を伸ばした。教師が「この子は伸びる」と信じた結果、無意識のうちに接し方が変わったから。という実験。

期待が相手の行動を引き出し、行動が結果をつくる。
さきほどのAIの話と、骨格がぴったり重なると思いませんか?
違うのは、期待を向ける先が「生徒」ではなく「AI」だという点だけ。

AIでも、本当に同じことが起きているのか?

面白いのは、これがただの比喩で終わらず実際にAIで検証されはじめていること。
好奇心に導かれてAIとピグマリオンとの関連性みたいな事を調べていたら、検証してる人いました。w

14年連続世界大学ランキング1位君臨するMIT。そのMITメディアラボなどの研究チームが2023年に発表した研究(Nature Machine Intelligence掲載)では、参加者に同じ対話AIを使わせる前に、異なる「思い込み」を植えつけた。あるグループには「このAIは思いやりがある」、別のグループには「操作的で下心がある」、もうひとつには「ただのプログラムで意図はない」と説明しておく。中身はまったく同じAI。

結果、「思いやりがある」と聞かされた人ほど、そのAIを信頼でき・共感的で・効果的だと感じたという。しかもポジティブに接することで会話そのものまで前向きに転がっていく、という好循環まで観測されたそうです。
AIはそれを見る人の心を映し返す鏡のようなものだ!というわけです。

もう一歩踏み込んだ研究もありました。HCIという分野の「AIのプラセボ効果」と呼ばれる実験です。
プラセボ効果=薬効成分を含まない偽薬(プラセボ)を投与されたにもかかわらず、「症状が良くなる」という患者の強い期待や思い込みによって、実際に病状の改善や身体的な回復が見られる現象の事。

実験では参加者に「あなたの課題にはAIの支援がつきます」と伝える。ところがその支援機能は実際には存在しない。それでも参加者は自分の成績への期待を高め、しかもその期待は、実際の課題(単語パズル)で解けた数の多さと相関したそうです。「支援がある!と信じた」だけで、本人のパフォーマンスが現実に押し上げられたわけです。これも、AI版ピグマリオンと言っていいのではないでしょうか。

ただし「盲信」は逆効果——健全な期待のかけ方

大事な但し書きをひとつしておきましょうね。「信じればいい」を「検算しなくていい」と取り違えてしまうと、今度は反対側に転んでしまいます。AIは平気でもっともらしい嘘(ハルシネーション)を返します。過度な信頼は、その間違いを疑わずそのまま採用してしまう事故につながります。※特に責任が伴うような業務にAIを使う人は要注意。
「全部正しい」と思い込む人と「全部ダメ」と思い込む人は、向きが逆なだけで、どちらも思い込みに引っぱられている点では同じなんです。

んで、狙いたいのはその中間くらいですね。具体的には、こういう期待のかけ方になるかと思います。

  • 「デキる相棒」だと思って、丁寧に前提を渡す(=期待を“手間”に変える)
  • 提案はまず一回試す。ズレたら会話で直す(=改善ループを必ず回す)
  • 重要な事実・数字・引用は、最後に自分で裏取りする(=信頼と検証はセットにする癖をつけると良い)

期待は「楽をする理由」ではなくて、「丁寧に使うための投資」だと考える。
そう置き換えると、ちょうどいい温度になるかと思います。
ピグマリオン効果の教師だって、ただ期待していただけではなく、その分だけ手間と機会を増やしていた訳です。
AIに対しても同じで、期待は行動に変えてはじめて効く

まとめ

AIは使う人を映す鏡のようなところがあると思いました。
「どうせ使えない」と決めつけて雑に扱えば、その予想どおりの残念な結果が返ってくる。
「デキる相棒だ」と信じて丁寧に向き合い、提案を試し、そして自分の目でちゃんと検算する人が、結局いちばん得をしている気がします。半世紀前に教室で見つかったピグマリオン効果は今、人がAIに向ける期待の話としても成り立ちはじめているかと思うと少し震えますね。

完璧に信じる必要はないし、完璧に疑う必要もない。
次にAIを開くとき、ほんの少しだけ「こいつはデキる」と思って、丁寧に話しかけてみる。
返ってくるものが、たぶん少し変わる感じがするはずです。

これを言うと元も子もなくなりますが、ピグマリオン効果は生活しているといたるところで発揮します。
勿論AIに限った話ではなく、ポジティブに向き合うとネガティブに向き合った時と比べたら気持ちも結果も良くなるのは「何となく」みんな感じてる事ですよね。

Verified by MonsterInsights